20170701

図書レビュー「図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復」東京芸術大学大学院文化財保存学日本画研究室編

図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復のレビュー

図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復

本日レビューします日本画の図書は「図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復」東京藝術大学大学院文化財保存学日本画研究室編 東京美術出版(2008年 第三版)です。この本は日本画の参考図書としては直接の教科書にはならないものの、日本の文化財の展覧会に行くときには知っておいたほうがよい知識が書かれている本です。尚、同著者の「図解 日本画用語事典」はこの本をさらに詳しく分解して個別に説明した本であり、今回紹介します「図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復」は教科書的な役割の本となっています。

本書の目次

本書の構成は五部となっています。第一部は日本画全般についての説明です。基底材といって紙や絹、木に絵を描く方法と絵具や膠や筆などの道具、技法についての説明があります。第二部は模写の世界、第三部は修復の世界、第四部は研究の世界、そして最後はメッセージとなっていて初学者でも日本画と日本の文化財の知識を深めることができるようになっています。

図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復目次

図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復目次

本の内容のレビュー

この本は同著者の「日本画用語事典」よりは文字が一回り大きく3mm程度の大きさで若いうちなら目を凝らさなくても割と読めるようになっていますが、50代を過ぎると悲しいかな虫メガネや老眼鏡が必要な感じです。やはり注釈などは2mm程度と小さな文字で写真も小さく日本画をはじめられた多くの高齢者にとっては読みづらいです。価格は2,500円に消費税8%であり「日本画用語事典」よりは千円安いものの、内容はその分薄く情報量も少な目です。しかしこれから大学や博物館などの講習に行かれる方が予習としてお読みになるには十分の知識が書かれていますので、この本を読むだけでもお教授様や学芸員の先生方の言っている事の意味が理解できるはずだと思います。たまーに知識の風呂敷を広げて先生に擦り寄る(金持ち)オジサンが生徒でいますけどね(笑)いくら趣味とはいえ、先生の隣はこれから発芽する若い者に席を譲ってあげるべきだと思います。

この本は個別の絵具については詳しく説明されていません。おおざっぱに岩絵具、新岩絵具、水干絵具という説明と製造工程の写真が載っています。膠については2ページが割かれており、写真入りの製造工程も載っています。用具もたったの2ページですし、描き方の2ページだけの紹介です。技法をお求めの方には物足りない内容といえましょう。だいたい何でも2ページですね(笑)

修復に結構ボリュームが割かれています。

あくまで最低限の必須の知識であっても、日本画の知識に漏れがある人にとっては入門書的な役割の本になると思います。しかし買ってまで読む必要があるかというとそうとは言い切れません。

ご苦労されて執筆・編集されたのはわかるのですが、同じ値段なら各分野の「詳論」を1冊ずつ未知の知識や伝統技法を詳しく本にしてくれたほうが学習者だけでなく各美術館・博物館の学芸員にとっても、本質的には日本の文化財を保護するためにもよっぽど有難いといえましょう。

お近くの図書館にあれば借りて読む価値はあるでしょう。冒頭の年表はちょっとした歴史の勉強になります。
図解 日本画の伝統と継承―素材・模写・修復 内容は薄めですが、アマゾンでのご購入はこちらです。今なら中古で半額以下で買えます。

図解 日本画用語事典 やはり、こちらの本のほうがさらに文字が小さいけどまだマシですね。でも値段高すぎ!アマゾンでの購入はこちらからです。楽天ブックスにも図解日本画用語事典 [ 東京芸術大学 ]はあります。
今回の貧乏日曜日本画家のレビューの内容がよければ本を買って行ってくださいね。