日本画絵具の胡粉と方解末、軽石、タルクとは?
今日は、日本画に欠かせない胡粉について学びたいと思います。
胡粉(ごふん)
現在の胡粉とは白色の顔料で炭酸カルシウムを主体とする絵具です。
古くから世界中で白色顔料として使われてきました。
日本にはシルクロードを伝って胡粉が伝えられ、
古くは奈良時代に鉛白を胡粉と呼んでいました。
室町以降の胡粉
室町時代からは牡蠣などの貝殻を砕いた胡粉が好まれるようになり、
胡粉といえば牡蠣殻を粉末にしたもののことを意味するようになりました。
イタボガキの胡粉
胡粉といえばこれをイメージする方も多いのではないでしょうか。10年以上風雨に晒し、
表面を研磨して石臼で挽きます。ナカガワ胡粉が販売されているようです。
(イタボガキから造る胡粉
参考HP)
イタボガキは瀬戸内海で獲れていたそうなんですが、
今では貝が絶えてしまいもう得られないそうでイタボガキの胡粉生産も在庫限りで終わられる予定のようです。
気になって調べたところ、昔は日本の沿岸によくある貝だったそうなのですが、
1980年代中ごろを最後に忽然と姿を消し、ほとんど絶滅してしまったようです。
ほかにもいろんな貝類が姿を消したそうです。
もしかしたら山からのの養分が土砂とともに沿岸に流れなくなったことが影響しているのかもしれませんね。
日本沿岸の砂浜を形成している原料のひとつが川からの砂であり、その供給が絶たれていることは砂浜の減少や干潟や浅瀬の生物の絶滅や減少とも関係ありそうです。
巡り巡って遠洋の生態や漁にも影響がありそうですね。
2014年大分県の岩本水産でイタボガキの養殖に成功したそうです。
ホタテ貝の胡粉
帆立貝から作られた胡粉です。上羽絵惣がネイル向けに製造しているようですが、画材としては詳しくはわかりません。
現在の胡粉
貝殻から製造した胡粉を含め、
貝化石などの重質炭酸カルシウムを原料とする岩石を胡粉というようになりました。
重質炭酸カルシウム岩石の胡粉
いわゆる石灰岩のことです。古代の貝化石です。
皮肉にも日本画家にとって必要な山を醜く削って作られる顔料です。
方解石(方解末)や大理石(岩胡粉)も石灰石のひとつです。
方解末
方解石の粉末です。安価な白色顔料です。寒水石とも。
方解石(ほうかいせき、calcite、カルサイト)は、鉱物(炭酸塩鉱物)の一種です。
組成は炭酸カルシウム(CaCO3)。
石灰岩の主成分鉱物で、鉱石として扱われる場合は石灰石、石材として扱われる場合は大理石と呼ばれます。
(wikipediaより引用)
白土(シリカ)(SiO2)とは組成が異なる。
岩胡粉
大理石の粉末です。
結晶質石灰岩(けっしょうしつせっかいがん、英: crystalline limestone)と呼ばれる。石灰岩がマグマの熱を受けて接触変成作用で再結晶したもので、変成岩の一種である。主な構成鉱物は方解石です
楽天市場で岩胡粉を見てみる→
三吉絵具の胡粉
原材料が明記されていませんので、問い合わせてみないとわかりません。
商品説明に「岩を~」と書いてありましたので、岩系の胡粉かもしれません。
盛上胡粉(貝原料)
その名の通り、画面を盛るための胡粉です。
全体あるいは部分的に厚塗りをする際に使用します。
粒子が荒く不揃いで剥落が少ないのが特徴です。
筆者は価格の手頃な下記の吉祥の盛上胡粉を使っております。
このいちばん安い盛上胡粉の残念なところは、荒く作られていますので
時折黒い貝の破片が混じっており、
塗ってしまってからピンセットで取らなければいけないことがあり、
それを取ると画面に穴が開いてしまうところが厄介です。
空摺りをする際に見つけたら取り除いておくのがポイントのようです。
吉祥のウェブサイトに、盛上胡粉は・・・
「天然カキの貝殻を風化したものを粉砕し、水干精製したもので、
日本画では重要な材料です。とくに、白色で粒子の細かいものが上物とされます。
また、特上品は人形の顔などを作る時にも使用します。
と書かれてありましたので、この吉祥の商品は牡蠣殻で作られたものと思われます。
(ほんとうに牡蠣殻を使っているかどうかについては記述がなくお店にお問い合わせください。)
触るとふわっとしたやさしい感触があるのが特徴です。
ナカガワ胡粉の胡粉です。
水飛胡粉はイタボ牡蠣の貝殻を10年間野ざらしにして石臼で挽いて作ったとあります。
上等の胡粉です。
ホルベインの胡粉
ホルベインの胡粉は天然カキの貝殻を風化し、水干精製したものです。
上羽絵惣の胡粉です。
精製度によってグラムあたりの価格が違います。
飛切は現在製造を中止しているそうです。
(胡粉ネイルにホタテ貝を使っているそうですが、画材の胡粉にどのような貝を使われているかについては記述がなくお店にお問い合わせください)
日本画に使うには価格が高いので、下地材というよりは人形など大事なところに使います。
上羽絵惣の現在は安全な胡粉ネイルで女性客を獲得し、がんばっておられるようです。
胡粉ネイルの類似品がでるほどですから、成功されているのでしょう。
雲母を入れて輝きを出された色もあるようです。
軽石(盛上)
軽石(かるいし、pumice、パミス)とは、火山砕屑物の一種で、
塊状で多孔質のもののうち淡色のもの。浮石(ふせき)あるいは浮岩(ふがん)ともいいます。
主に流紋岩質~安山岩質のマグマが噴火の際に地下深部から上昇し、
減圧することによってマグマに溶解していた水などの揮発成分が発泡したため多孔質となったものです。
栃木県の鹿沼土も軽石です。
(wikipediaより引用)
鹿沼土のように、軽石そのものは酸性です。
日本画の軽石は・・・筆者は使う機会がなく手元にないのでph測定していません。
もし盛上という軽石が酸性であった場合は作品の長期保存性が劣ると思います。
軽石(パミス)は西洋画だけでなく日本画の盛上として使われます。
おそらく三吉絵具の盛上は軽石ではないかと思うのですが、真偽はお店の方にお問い合わせください。
タルク(滑石)
タルクとは滑石のことで、珪酸塩鉱物の一種、あるいはこの鉱物を主成分とする岩石の名称です。
水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物で、粘土鉱物の一種です。
組成式は Mg3Si4O10(OH)2 です。ろうそくや真珠のような光沢をもち、
蝋石とよばれることがあります。
チョークの原料ともなり、モース硬度は1と柔らかい石です。
低品質のものは、アスベストを含有することがあるので不用意に吸入したりすることのないよう注意が必要でです。
(wikipediaより引用)
石膏(せっこう、gypsum、イタリア語でジェッソ)とは硫酸カルシウム(CaSO4)を主成分とする鉱物です。
日本には本物の石膏はイタリアからの輸入に頼っており供給が不安定で、
ホルベインのボローニャ石膏とクサカベピグメントソチーレ石膏が有名です。
白色顔料は商品によっては品質が一定ではなく色合いが微妙に異なりますので、気に入ったものがあればまとめ買いをされることをおすすめします。