20161017

第四十八回 日本画無料講座 岩絵具を盛り上げてマチェールを作る方法

日本画の岩絵具を盛り上げてマチェールを作る方法

こんにちは。みなさん制作の調子はいかがでしょうか。日本画は色重ねの美しさ、といいますが、現代の日本画は近代に見られた「色重ねの美しさ」や「余白の美」だけではまったく評価されない時代となってしまいました。むしろ、下の色を隠すほど厚塗りしているほうが、たくさん描いたから、というような理由といいますか、画面に隙(余白の美しさ)がないと良いと判断されることもしばしばで、価値観というものは美をもダメにしてしまうものだと感じる昨今です。

美とはかけ離れた領域で優劣が競われている現代日本画ですが、それらの日本画によくみられる手法として、岩絵具の盛上という技法があります。

日本画の岩絵具で盛上げたところ
日本画の岩絵具で盛上げたところです(筆者制作)

写真が見づらくて申し訳ありませんが、これが今流行ってる日本画の岩絵具で画面を盛り上げて仕事をしましたという感じを出すセコい演出です。

本来は岩絵具の和紙全体への盛上げを意図的にやるものではないと思うのですが、仕事をしました~みたいな感じを出すためにわざとやる人も多いのではないかと思います。ほら、アレと同じ、コピペして自分のロゴを作りました~みたいなレベルですので誰でも簡単に、初心者の方でもこの写真のような絵肌を作ることが可能です。

この盛上げ技法は被覆力が強いので、下の層を隠すことが可能ですが、それをしてしまいますと、自分の技量のなさが露呈しますし、日展画家でも平気でこんな風になさっている人もよくお見かけしますので、私はこうした隠ぺい・ごまかし技法は日本画の趣旨から離れますので好きではないのですが、これがまた評価される要素のひとつとなっていますから、みなさんにもご紹介、ネタ晴らししようと思いました。

もちろん、この凹凸を生かして何かを表すということもよいとは思いますが・・・本質的には日本画ではなくなると思います。でもこうでもしないと、市展レベルでも日展系の審査員にはまったく見向きもされないし、画面に厚みを持たせて派手に演出することはまるで評価基準のひとつになっているという日展系の審査員の間での既成事実は無視できないと思います。

では何番の岩絵具を使えば、この日本画の塗り方ができるかといいますと、意外と何番でもいけますし、大体10~12番あたりの範囲内なら簡単にできると思います。この方法は「平筆」を使ってさっと塗ります。

この方法は水彩と同じでテクニック、技法のひとつといってもいいでしょう。ただ日本画の場合、この方法で被覆しますと、下塗りに使った絵具がもったいないと思います。昔の人は貧しかったので、少ない資源でもっと絵具を大事にしてたと思います。だからこのような塗り方をすればもう日本画ではないといいますか、マチェールは洋画以降の美術用語ですから、区分は近・現代アートに入るんじゃないかと思います。

そうです。もはや日本画は、日本画たる花鳥風月、山水、人物などという表現ジャンルに加え、洋画の技法(何とかイズム)でも描くことが可能なのですから、猫も杓子もこぞって現代アートで日本画を描いて応募する人が多いです。だから「え、これが日本画?」みたいに見る人が戸惑ったり、何も知らない人にはむしろ現代アートの日本画のほうが刺激が強くて鈍感になった都会人に受け入れられたりもします。そして現代アートのほうが自己主張やメッセージ性が強いものですから、公募展では「控え目な、おしとやかな、純朴な」といった可憐で儚い日本らしさを表現した本来の日本画は負けてしまうのです。今大人気の伊藤若冲の墨絵は価値は高くても三大公募展に出しても選外でしょう。もちろん写生は大事ですが、学校で求められるような写実のレベルは写真を見て描きたくなるほど写実が好きな人以外に必要ないのだとわかります。そんな意味では基本的な画力は日本画家より漫画家のほうが、はるかにデッサン力は上なのではないかと思えてくるほどです。

やはり日本画は、デッサン力や知識などよりも、欲が少ない田舎のおばーちゃんが描いた絵のほうがどんなプロの作品よりも勝ると思います(筆者の個人的見解です)。なぜなら、それが一番日本人の良心を表しているからです。

20161012

第四十七回 日本画無料講座 表現のすすめ。ネタ切れなら休憩して外に出よう

表現のすすめ。日本画でネタ切れになったら休憩して、外に出よう

こんにちは。みなさん制作の調子はどうでしょうか。日本画の制作で趣味以上の公募展を目指すなら、ただ単にひとつの植物や動物を最低限の号数の和紙(キャンバス)に描いただけでは、どんなに技量があろうとも、受賞は不可能です。日本画で地元の市展や県展の公募展で受賞するには、卓上の小物や植物をそのままシンプルに描いただけでは、色彩や構図に特別な工夫がない限り、受賞は厳しいです。日本画はド派手であるほど地方の公募展での入賞確率が高まりおとなしく清楚である作品は、小さな号数では入選どまりです。日本画の審査には大学の入学の試験や成績評価と同じように、構図、デッサン、塗りの技術、色彩、その展覧会にふさわしい話題性など、日展的な審査基準が適応されています。地方の市展や県展といえども日展の審査員が名前を連ねていたら、要注意です。彼らは往々にしてデッサン力がない地方の公募展においては色彩や構図、地域性、強いインパクトを重視しデッサン力はあまり重要視していませんので、それに合わせた描き方をしなければ入賞は難しいです。もちろんそれ以外の要素でも高いレベルであれば、入賞可能ですがひたすら写生を追求して汚くなったような作品は入選が関の山といえましょう。無意識にマティスのようになった作品も、日本画では構図と色彩がよければ評価されます。中途半端にリアルに描こうとして技能が足りなかった場合は低評価になりやすいです。日本画で写実を追求しすぎるとほかの部分が犠牲になって結局、デッサン技量不足だけが目立ったりしますので、気を付けたいところです。デッサン能力の無さをカバーでけきるのは、構図や塗り方です。
  • 難易度の高い被写体(モチーフ)
  • 構図
  • 色彩
  • 塗り重ねの技巧
  • テーマ
狙いのテーマが上手に基本的技術で表現できていたら、入賞は易いでしょう。構図も一般的な構図法にのっとっていればデッサンが下手だったとしても、卓上の小物を大胆に描いたとしても優秀な作品として評価されるでしょう。しかし少々その法則を無視して試行錯誤の途中という感じを出したまま応募しますと、よほど100号とかいかにも苦労しましたという感じが出ていない限りは、入選が関の山でしょう。

市展や県展で入賞を目指しそれを目的にすることは決して楽しくはありませんが、基本に乗っ取って勝負しましょう。残念ながら、どの作品が入選するかは審査員の好みや主催者の要望次第であり審査は公平ではありません。朦朧とした曖昧な表現も審査員に理解がなければ低評価に繋がりやすいです。ジャクソン・ポロック、アンディ・ウォーホル・・・コンセプチュアル・アート、ポストモダン、それらを模倣しても、模倣でしかありませんが、知ってる人が見たら評価してもらいやすくなるでしょう。ポストモダンは炎上商法と共通するものがあり、日展の日本画家でも取り入れられてる技法です。ミニマリズムで日本画を作ったら、間違いなく芸術じゃないと受賞候補から排除されるでしょう。そうかといってこれが新しい技法だ!と我流を出したとしても、人間ですから差別意識が高まり「嫌い」という感情が審査員に生まれるのは考えるまでもありません。審査員も人間ですから「嫌い」と「作者」の名前を何度も見ると、パブロフの犬同様に「作者」の名前を見るだけで「嫌い」という感情が犬のごとく湧いてくるものです。権威ある画家も犬と変わりない心理を持っているということですので、常連の審査員や委員、主催者に目を付けられいじわるされないように気を付けましょう。

つまるところ、芸術家の意図なんて、技法がわからないと見る人には少しもわかりません。どんなに難解な作品でも、無知な大衆には好きか、どうでもいいか、嫌悪するか、と、時には作者の感情を感じるか、その程度しかわからないものです。ですから、誰に見てもらいたいかによっても表現方法は変わってきます。幼児に見てほしいなら、絵本のように色とりどりで、優しく傷つけない表現方法を、今時のカワイイが好きな女性に見てもらいたいなら、ポップアートみたいなカワイイ表現を・・・高齢者に見てもらいたいなら近代日本画を、偉ぶった男性の倫理観を挑発したいならヌードの女性とポストモダンと、そんな感じで表現方法を見直してもいいかもしれません。

例えば信仰心をそのまま表現したければ、仏様やマリア様を描いて応募したっていいんです。怒りを表現したって、何描いたっていいのです(あまりに倫理観を逸脱したら、地方程度の公募展では悪評がたつかも)。何も旧式の日本画の表現に囚われる必要はありませんし、そもそも師事してないのにいくら頑張ったって、伝統技法を受け継ぐことはできませんから。審査員をおちょくりたいなら、何も表現しないことを目指したっていいのです。何も「こんなに苦しみました~!」をみじめに表現しなくたっていいのですよ。自らを貶める必要なんて日本画でもありませんから。日本画もまた、金持ちご用達の富と権力を象徴する芸術という枠は先生方の努力によって取り払われつつありますから、もっと気楽にいきましょう。

あなたは日本画で何を表現しますか?それとも先生の靴を、舐めますか?

20161006

第四十六回 日本画無料講座 岩絵具はセットで買ったほうが得か?

日本画の岩絵具はセットで買ったほうが得なのでしょうか

今日は、岩絵具はセットで買ったほうが得なのか考えてみました。日本画の岩絵具のセットは「ナカガワ胡粉 鳳凰 岩絵具セット」と「吉祥 日本画用岩絵具セット」の二つのメーカーがあります。ぱっと見た限りでは吉祥の日本画岩絵具セットのほうが高級そうで色ぞろえも素敵です。では、さっそくセットの中身について調べてみましょう。

ナカガワ胡粉 鳳凰 岩絵具セット

ナカガワ胡粉の岩絵具セットには、12色A~Dセットの4種類、24色セット1種類、48色セット4種類があるようです。価格は12色でアマゾンで7,730円、24色で13,200円、48色で21,600円程度です(税・送料込み)。

1瓶あたりの価格は・・・

  • 12色・・・644円, Dセットだけ979円
  • 24色・・・550円
  • 48色・・・450円
内容量はおおむね15gで、白番は10g~12gだそうです。

ナカガワ胡粉 12色セット 製品 ラインナップ


Aセット

Bセット

Cセット

Dセット(天然)
画像が小さくてよく見えませんが、どれも赤、黄、緑、青色が入っているようですね。赤函は、群青など基本的な色が揃ってます。緑函は赤函よりも一層濃い色のラインナップです。青函はA、Bには含まれない色で重複しません。Dの黄函は、天然ですので高いです。

A・・・赤口本朱、岩橙、岩黄、黄土、岩岱赭、鴬、美緑青、美緑青、群緑、群青、群青、岩黒
B・・・岩紅、辰砂、山吹、金茶、栗茶、美草緑、裏葉緑青、水浅黄、浅黄群青、岩紺、岩桃、岩鼠
C・・・岩赤、岩紫紅、樺茶、天然瑪瑙末、焦茶、若葉、黒緑青、黄茶緑、水群緑、美群青、淡口紫、天然岩胡粉
D・・・象牙色、濃口珊瑚末、岩辰砂、岩朱土、岩群青、紫雲末、松葉緑青、緑瑪瑙、岩金茶、岩岱赭、岩黒、水晶末

ナカガワ胡粉 岩絵具セット 24色 赤函

ナカガワ胡粉 日本画用絵具 鳳凰 岩絵具 24色セット 

赤口本朱、岩紅(12番)、岩橙(9番/12番)、岩黄(9番/12番)黄土(9番/12番)、岩岱赭(9番/12番)鴬(9番/12番)、美緑青(9番/12番/白番)裏葉緑青(12番)、群緑(9番/12番)群青(9番/12番/白番)、水浅黄(12番)岩黒(9番/12番)

なるほど。9番ですか。これは好みが分かれますね。9番や12番を持ってない私にはちょっぴり魅力的に感じられます。9番と12番を混ぜて使う豪華スタイルでしょうか。

ナカガワ胡粉 岩絵具セット 48色 製品ラインナップ


飛鳥

天平

平安

桃山

どうやら名前が時代順になっているようです。

飛鳥
新岩絵具12種類で各色7、9、11、13番入り、4段階の濃淡。
岩赤、岩橙、岩黄、黄土、岩岱赭、鴬、黒緑青、美緑青、群緑、群青、岩鼠、岩黒。

天平
新岩絵具12種類。各色8、10、12、白番入り、4段階の濃淡。
岩赤※(赤口本朱)、岩橙※(黄口本朱)、岩黄、黄土、岩岱赭、鴬、黒緑青、美緑青、群緑、群青、岩鼠、岩黒。

平安
新岩絵具12種類。各色8、10、12、白番入り、4段階の濃淡。
岩赤(赤口本朱)、岩橙(黄口本朱)、岩黄、黄土、岩岱赭、鴬、黒緑青、美緑青、群緑、群青、岩鼠、岩黒。

桃山
新岩絵具24種類。各色8、12番入り、2段階の濃淡。
岩紅、岩桃、山吹、金茶、赤口岱赭、黄茶緑、若葉、裏葉緑青、焼緑青、水浅黄、美緑青、淡口紫、辰砂、岩樺、樺茶、焦茶、小豆茶、鶯茶緑、美草緑、松葉緑青、水群緑、浅黄群青、岩紺、濃口鼠。

天然
天然岩絵具24種類。各色8、12番入り、2段階の濃淡
岩金茶、岩黄土、岩辰砂、岩岱赭、赤口小豆茶、濃口珊瑚末、岩群青、岩群緑、松葉緑青、緑瑪瑙、碧玉、白翠末、柳葉裏、丁子茶、茶白、岩朱土、岩肌、象牙色、水晶末、紫雲末、黒曜石末、朽葉色、岩焦茶、岩黒

なるほど!桃山と天然は24色で、それ以外は12色とちょっと微妙なラインナップですね。桃山以外は1箱で絵を描けそうにありません。桃山もこれだけでは描けない作品もあるでしょう。でも確かにお買い得で普段は買わない(高くて買えない)粒子番号であるなら新しい表現方法を模索するときに役に立ちそうです。どうせなら8番と9番セットで出してほしかったですね。私が買うとすれば、持ってない番号が多い桃山かなぁ。小瓶を持ってないので、小瓶代と箱代も考えると48色セットはお得ですね~。瓶と箱を買ったら5千円くらいはするでしょう。

吉祥 日本画用岩絵具セット


吉祥 岩絵具 12~30色セット

吉祥 岩絵具 60色セット 3種類

準天然岩絵具 12色セット

岩絵具 90色セット
さて、お次は吉祥の日本画用岩絵具セットを見てみたいと思います。吉祥は12色セットが1種類、24色セットが1種類、30色セットがNo.1、No.2、No.3の3種類、60色セットが京華、花鳥、新緑、岩山、海景の5種類と小さいセットの2パターン、90色セットが1種類あります。内容量は不明で一体何両ずつ入っているかはわかりません。

アマゾンの税込み送料込みの実売価格は・・・
  • 光彩色10色セット 7,073円・・・1色あたり707円
  • 12色セット 7,212円・・・1色あたり721円
  • 準天然 12色セット 24,298円・・・1色あたり2,025円
  • 24色セット 13,824円・・・1色あたり576円
  • 30色セット No.1 17,280円・・・1色あたり576円
  • 30色セット No.2 17,280円
  • 30色セット No.3 17,280円
  • 60色セット 京華 33,727円(マルニ画材店)・・・1色あたり634円
  • 60色セット 花鳥 24,300円(絵具屋三吉)・・・1色あたり405円
  • 60色セット 新緑 33,806円・・・1色あたり563円
  • 60色セット 岩山 32,860円・・・1色あたり548円
  • 60色セット 海景 34,443円・・・1色あたり574円
  • 90色セット 55,243円・・・1色あたり614円
・・・となり、飛鳥だけはナカガワ胡粉に安さの面では単純に安いです。残念ながらどんな岩絵具が入っているかは写真だけではわかりませんが、60色セットの花鳥、新緑、岩山、海景は何となく番号違いの15色が入っているように見えます。この概要だけではお買い得かどうかわかりませんね。しかしこの吉祥、みょ~に親しみを感じるパッケージデザインですね。古臭い感じを出していて、ふら~っと画材店に行ったら用がないのについ手に取り買っちゃいそうな。

このようなセット物って使うの勿体ないと思ってしまいます!持ってるだけで、宝物、みたいな・・・だからいつまでたっても私は・・・初心者です^^;

第四十五回 日本画無料講座 日本画の保管方法

棚や押入れに日本画を入れてはいけません!

博物館資料保存論―文化財と空気汚染
その日本画の保管方法、ちょっと待った!日本画は棚や押入れに収納する前に、その収納先は湿気が貯まるタイプかどうか、調べてみましょう。特に一階に絵画を保管する際には要注意です!しばらく使っていない戸棚や押入れを開けると、むせたり、むっとしたことはありませんか?そんな場所に日本画を収納してはいけません!日本画も本と同じように紙でできていますし、革のバッグと同じで膠を含んでいますから、日本画の保管はそのような場所に収納してはいけません。もちろん外からの光で部屋が明るくなるような場所にも日本画を保管してはいけません。ネズミなどにかじられるおそれもあります。

日本画を収納するときは、湿気が貯まらず適度に通気性のある場所に保管します。正倉院のような環境がベストです。できれば蔵や、3階建ての家に住み、2階あたりで中性紙に包んで保管したいところです。できるだけ、理想の保管場所づくりを目指しましょう。

本がカビるようなおうちに住んでおられる場合は、同じ場所に日本画をずっと置いておかないようにしましょう。空気清浄機を使ってみると、見えない茶色の汚れが空気中に漂っていることがわかります。

第四十四回 日本画無料講座 合成岩絵具の使い方

日本画の合成岩絵具の説明と使い方

前回は合成岩絵具を安価な絵具としておすすめしていました。合成岩絵具とは、水晶末または方解末に顔料をコーティングした絵具で、カラ擦りをすると顔料が剥がれてしまう絵具です。ホルベインの優彩や、石彩絵具も同様に顔料をコーティングした人造岩絵具です。ホルベインの優彩は水晶末に着色してますので、混色できるとの説明があります。上羽絵惣新彩岩絵具は、方解末に着色した合成岩絵具です。水干は胡粉という微粒子を染色していますので、天然の水干以外の合成水干もまた人造絵具といえましょう。
  • 合成・・・ただ合成と書かれたものでメーカーはわかりません。
  • 優彩・・・水晶末をコーティング、ホルベイン
  • 新彩岩絵具・・・方解末をコーティング、上羽
  • 石彩岩絵具・・・2000度で焼成処理したボーキサイト(bauxite、鉄礬土、酸化アルミニウムを含む鉱石)に着彩した岩絵具、三吉
コーティングがどのように行われているのかはわかりませんが、方法さえわかれば自分でも絵具を調合することができると思います。膠では気温で溶解しますので、樹脂を使えば自分でもコーティングできるかもしれません。樹脂にも耐久性がありますので、特殊な樹脂が必要となってくるでしょう。

合成岩絵具最大の欠点、それは退光性!

先日、私も主たる物にやむを得ず合成岩絵具を使ってみました。ところが蛍光灯の光といいますか、紫外線だけじゃないと思うのですが、暗い部屋に一か月ほど置いていたのに、何となく鮮やかさを失っていました。普通の人には見わけはつかないと思うのですが、私の目にはマゼンタっぽい色が色あせているように思いました。もしかしたら、素地の白が影響して乾燥するにつれ彩度が低くなっただけかもしれませんが、ちょっと気になる出来事でした。もちろん天然の岩絵具も酸化したり、部屋の汚れた空気や塵の混ざった湿気で汚くなっていきますから、退色は絵画の宿命ともいえましょう。デジタルで作った絵と比べると、日本画もまた鮮やかさでは叶わないなと思わせる出来事でした。岩絵具ですら、いつかは革のバッグがダメになるのと同じ理屈で高い湿気を含むとカビたり剥がれ落ちてしまいますから、膠という接着剤についても考えさせられました。

合成岩絵具は指などで溶いてから使います

合成岩絵具は、膠とは混ざりにくかったり、水にプカプカと浮いて粒子が固まっていたりしますので、少量の膠や水で溶いて、一回水を捨てて膠水を足すなどして使います。

20161004

第四十三回 日本画無料講座 その作品、破かないで!

日本画の失敗作は破らないで

未発表の作品を出品することになり、2年前の作品を見てみたら、自分で言うのも何ですが、意外とすばらしく出来ていました!当時はそんな風に思ったことはなかったのですが、久しぶりに他人の作品のごとく見てみると、まるでプロが作ったかのようなレヴェルです。誰も褒めてくれないので自画自賛。

この体験に限らず「もーだめだこりゃ!」なんて衝動的に思ってもしばらくは破らないで置いておいたほうが、絶対いいですよ!

捨てるなんてもったいないです。

捨てるくらいなら、欲しい人に売ったりあげましょう。

第四十二回 日本画無料講座 みんなが不思議に思っていること

日本画の不思議 きれいじゃない作品も多数受賞!?

プロ志望の方が多く集まる公募展に行くと・・・みんな似たような作品になっていると思いませんか?素人の方のほうが好きな物描いていて好感が持てると思いませんか?私は思います!もちろん好きな物の寄せ集めのほうが見ていて単純な楽しさはあるし、え?と思うような作品も立派な作品でしょう。欲深い目的のためにわざわざ描く動機やテーマを作ってるという本末転倒な事態も日本画で起きているかもしれません。もちろん、そこに迎合せずご自分のスタイルを貫いておられる方は素晴らしいと思います。

私も応募しようかな、と思うと、好きな物を楽しく描いただけの単純明快な描き方では県展以上の公募展では賞は取れないだろうなぁ。と思うときがあります。この描き方では盛り方が少ないから飾ってもらうことはできても入賞は難しいかなぁなんて。とにかく盛ってないと、日本画で応募しても入賞は厳しいという風潮を感じています。そしてより難解にすればするほど「おっ?」と評価されるという印象も受けます。

それと、平面共通の公募展では日本画は油彩と同じ審査基準で評価されるから、日本画はぱっと見目立たないので、第一印象で淡く見劣りがして評価する側には日本画や水墨画の理解がないのではと疑問というか、不思議に思うときがあります。洋画の審査員はどうしても「一に構図、二に色彩、三に表現内容、中身ビビッとキターり延々と考えさせられるならそれでいいのよ」となりがちです。日本画の応募者が油彩の色彩や表現手法に合わそうとするのは公募展や名誉などに欲をかくか、そもそも日本画を画材のひとつとしか思ってないタイプの人がすることですから、実際に日本画で応募する人も洋画と何ら違いの無い作品が多く見られます。そうやって絵具を盛るから、どうしても汚くなっちゃうのですね。そして絵具を買うお金もない人はモノクロか黄土気味になってしまう。審査員も応募者が苦労して純粋に励んで作品を極めんとすべく作ったのか欲をかいて戦略的に作ったのかなんて見てわかるわけがありませんしどちらもあるのが現実でしょう。県展以上の大作の公募展となると、原色か暗い色を使い、遠くからでも目に留まるように目立たせ、なおかつ高い技術水準をアピールし、テーマが壮大だったりアハー体験するか人間の暗部をあれこれ想起させられるようなタイプで納得できるものであれば「どうしようかなー」というくらいには審査員の目に留まるでしょう。だからどれもこれも似たような感じで大きくて色の濃い作品がということになっています。まず最低ラインの号数の応募作品などチラ見しただけで入賞があり得ないです。もちろん暗黙の合格ラインを打ち破るほどの絵を描ければいいのですが。きっと審査員なんかも例えば南画の精神を水墨画で表現してもわかるはずないでしょう、知識がない限りは。私が思うに公募展は平面の部をごちゃまぜにしてはいけないと思います。ジャンルが異なれば考え方も表現手法も絵具の性質も、かかった費用も時間も異なるので優劣をつけることはできませんし、現代アート以外の応募者は不利になります。日本画で100号で応募するなど、庶民は借金するレベルであることを西洋画の審査員の誰が知っているでしょうか?日本画の画材も含まれるさまざまな画材をミックスしたモダンアートと水彩画、日本画と旧日本画、水墨画、版画、それぞれ分けて審査しないと、少しでも公平には評価できません。その中にも抽象画や風景、肖像画、静物画や植物画と、表現したい対象も違いますのですべてを平面という一括りの中で評価することができるはずがありません。むしろ平面の部というようなあいまいな公募展の企画は伝統を重んじる日本画家にとっては入賞のチャンスが薄い公募展ですので、せめて風景画平面、とか、描く対象が絞られている公募展にしたほうが作品を比較されても納得しやすいです。今様の「女性に蝶」とか「牛の骨に女子」とか「女性の裸体に大自然」とか「化石みたいな貝殻と人物と図形」というちぐはぐなレイヤーを組み合わせた謎系の日本画や「悩まし気な哀愁ただよう動物園のゴリラや象や羊やフラミンゴ」といった不自然な都会の暮らしに枯れて何も感じなくなった心に刺激がある作品が砂漠のオアシスの如く乾いた喉を潤すものとして評価されるので、動物園もいいけど、何だかちょっと違和感を感じます。日本画を見る側の人も「これじゃない」感を感じているのではないでしょうか。日本画と日本画の画材を使ったこのような先端アートもまた区別されたほうがよいでしょう、見せたいことや考え方が違いますから。私も詳しい事情まではわかりませんが、日本画らしい花鳥風月や伝統的な作品が出来たなら、それ専用の公募展にのぞまれたほうが、現代アート偏重の展示会などに応募するよりも、まともに見てもらえるのではないかと思います。

日本画を知る者の誰もが、巨大公募展の作品を見て「意味の分からない絵」がどうして受賞したり入選しているのか不思議に思ったことがあるでしょう。そうかといって富士山の何千番煎じは認められません。もしかしたら審査員レベルになると、作品の意図が理解できるかもしれない、私も初心者の頃はそう思っていました。偉い大先生だからぱっと見ただけで意味のわからない作品の意味がわかるのだろうと。しかしパウル・クレーが時代に理解されなかったように、意味の分からない絵はその作家について研究している専門家じゃないと意味がわかりません。今だってわかっててピカソを見ている人など少数派でしょう。わかってる人も書物で得た知識がほんとうかもしれないと思い込んでいるだけです。批評している人だって作品について理解しているとは言い難いです。つまり、どんな大先生でも小難しい作品の意図など、(あらゆる表現方法を勉強してなければ)すぐにわかるはずがないのです。水墨画のことを知らない日本画の先生が水墨画を見ても意味など知る由もありません・・・。だからあれこれ見えない意図が入った作品を理解することなど、よほど単純明快な作品でない限りは無理だと思います。しかしそういった作品が今は日本で好まれており、作者の意味を理解できなくても、過去に何とかのすごい人が使った方法だからこういうことを考えさせられてすばらしいという評価を国内で受けている矛盾。

見る人にとってはどうでもいいような女性を描いた作品。男性はエロ目線で女性を描き、女性は私目線で女性を描く。男の画家が女郎を描けば歴史に残る春画となり、女性の画家が女郎を描けば囚人同様の哀れな女性を描いた名画となる。現代でも女性が絵に入ってると、ほぼ男性の審査員が女性に目を留めないはずがないと。だからますます女性を描いた作品が溢れる・・・・。汚い絵に神聖なタイトルがつけられた作品が大きな公募展で入選したりするからみんなこぞって画面を汚す。有名になってから儲かる画風に変わる人も。昔はもてはやされなかった伊藤若冲、誰もがそのほんとう良さを知ってて崇めているというのでしょうか。少なくとも私は伊藤若冲がジョブズみたいなアメリカの金持ちの間で人気になったから日本でも人気になった事実以外は何も知りませんので、きれいな絵を描く人だな、と思う以外は名画について語れる口もありません。人生後半の横山大観など、もはや政治家ですし、卑しい世界に魂を売ったようにも見える大観のほんとうの心など、私には知る由もありません。彼らが日本画家の地位向上のために政治を行った結果、日展という巨悪が生じ内部で卑しいことが行われているとしても私たちのような末端の趣味の一般人には知る由もありません。雪舟などになると今のゲーダイみたいに小手先の技術が必須とされて育った人たちにはなんてへたくそなんだと作画意図を知る前にこき下ろされている始末です。作品を作った人の苦労を思うと私にはとても誰をも否定することはできませんが。結果や成果を追い求める時代の現実が純粋な美や作品の中の思いやプロセスを認めない、死ぬほど苦しんだ末に解脱したってバカで中身がからっぽとしか思われない、そんなこともあるのが世の中です。

人は不思議なもので、中身のことはわからないけど、有名だから飛びつく人がほとんど。私も例外じゃないし、詳しく知ろうと思ったりどうでもいいと思うのはその後から。だから海外で売れたと知った日本人が人気があるからいいものだと思い込んで日本で人気が出るマジック!人気があってお金になるからそれ買っとけ、それがお金持ち。げーじゅつなんて、そんなものですよ。

初心者の方はなおさら気楽に日本画を楽しみましょう!難しく考えずに、それでいいのです。私がいつも思うのは、ちゃんとできているのにダメだと思ってすぐやめちゃう人が多くてもったいないと思います。はっきりいってゲーダイに入学する必要なんて一切ありませんし(行っても描き方なんて教えてくれません、ハクやコネがつくだけです)、お偉い先生に習う必要なんてないし、趣味のサークルなり自宅なりで日本画を楽しめたらそれでいいじゃないですか。ゲーダイに何浪もしている時点で並外れた出世欲と野心の塊であることは否定できないでしょう。それが悪いとは言いませんけど。

第四十一回 日本画無料講座 日本画の和紙の購入先を検討する(通販)

日本画和紙の通販の購入先を検討する

こんにちは。みなさん日本画の制作の調子はどうでしょうか。今回は備忘録を兼ねた日本画和紙はどこで買えるか?について考えました。私にはまだひいきの店というものがなく、とにかく他店より同じ商品が安ければそれでよしという考えがありますので、貧しいながらも何とか少しでも安く気軽に買えるお店を探してみました。鳥の子以外の和紙は筆者も知りませんので勉強がてら、調べてみることにしました。

日本画の基本で標準の和紙、鳥の子3号 3×6

日本画の基本で標準的な和紙メーカーの和紙です。どこのメーカーが作っているのかまではわかりませんが、たいていの店には鳥の子3号あたりが置いてあると思います。

筆者をはじめ、日本画で木製パネルに和紙を貼り付けて描いている標準の和紙は、鳥の子3号という和紙です。みなさんはもっと上等な和紙をお使いなのかもしれませんが、これは3×6で3,360円ほどで、どこで購入しても同じような価格です。ですのでこの和紙は襖絵にも使うことが可能で厚みがあります。ちなみにつるつるの面が表です。

日本画に使える和紙、鳥の子3号 3×6

鳥の子4号は、鳥の子3号よりも300円ほど安価な和紙です。

日本画・水墨画・水彩画の和紙、鳥の子2号 3×6


このランク になりますと、暮らしにゆとりのある方か、注文先からの指定がない限りは使うことのない上等の和紙で7千円クラスです。ちょっと奮発してみよう!という時に選択肢に入ると思います。私なら、これ以上の紙を買うくらいなら、絵具を買いますね。

鳥の子1号は9千円クラスの和紙です。この品質となると、和紙の風合いを生かした描写にしないと和紙がもったいないでしょう。水墨画にはおすすめですが、厚塗りにはこの和紙を使う意味がないのでおすすめできません。

なんと1万4千円の和紙です。贅を尽くした注文襖絵でも描くしかありませんね(笑)4日くらいアルバイトしないと買えません。鳥の子特号は庶民には無縁の和紙です。

5×7というとかなりの大作用でしょうか。筆者も高級和紙は見たことがありません。

鳥の子以外の和紙


誰もが知る雲肌麻紙で6千円台です。厚みのある和紙で日本画によく使われる高級和紙です。筆者から見ると、お金持ち用の和紙で、指をくわえて見るだけの和紙です。

神郷紙は5千円台です。水墨画に使われる中厚の和紙です。日本画でも薄塗りに使えそうです。

白麻紙は3,569円くらいです。日本画、水墨画に使われる麻混合紙です。表面は越前手すき和紙・・・ということは裏面は・・・。

雅邦紙は5千円台です。日本画などに使われる雁皮の滑らかさと楮の性質を併せ持つ薄手の大判和紙です。厚みは天平紙と同じでかすかに透けています。

白麻紙の3号は5千円台です。日本画、水墨画に使われる麻混合紙です。厚めで丈夫、大きな作品を描く場合に使われます。表面は越前の手すき和紙です。

日本画、水墨画に使われる手漉きの越前和紙です。お値段は3千5百円代と手ごろ。

日本画、水墨画、その他のアート作品に使われる手漉きの越前和紙です。茶色の細かいチリが漉き込まれていて表面にその凹凸があります。お値段は3千9百円台。透けているそうです。

水墨画に使われる和紙でにじみが出ます。お値段は3千7百円くらいです。

手漉きの越前和紙で表面は粗目の布目がつけられています。お値段は7千円代と雲肌並み。


薄手の大判和紙で掛け軸や巻物に適しています。お値段は5千円くらい。

特殊な和紙


杉の皮を漉き込んだ和紙で厚みの割りには裂けやすいそうです。そうか!アレですね、書道やお絵かきには向かないみたいですが、工作用といいますか、1シーズンとか、イベント用とか、短期間で廃棄する場合に向いてますね。厚みがあるし、杉だから白アリみたいな虫に食われそう!

中厚で透け感があり大作にも使用可能とのこと。5千4百円くらい。

同じく杉皮の和紙です。一時的な使い捨ての飾りにむいてると思います。いつもの障子にちぎって貼り付けるとか。私にはそれくらいしか思いつきません。もしかしたら墨を塗って壁に貼ってると脱臭効果もあるかもしれませんね。


お値段7千円代で東京芸術大学と共同開発。厚みがあるので大作でも安心ですね。厚塗りできそうですが、この風合いを隠してしまうのはもったいないかも。楮が原料で島根県産です。

厚みがあるそうです。ベンガラですので岩によっては化学反応が起きそうですね。岡山県産でミツマタが原料です。

那須楮の繊維長く、品質にばらつきがあるそうで壁画にも使われるそうです。

楮と杉の皮の和紙でインテリア向きです。

色付きの和紙 3×6

染色された和紙で仏画などの作品用です。金泥や銀泥、朱、胡粉などが映えますね。

藍が練り込まれているのか紺色で限定品で生産終了のため在庫限りです。




特大の和紙


お値段も特大で3万円台です。

2万円台の和紙です。


厚みのある和紙で日本画によく使われる高級和紙です。(※メーカーによっては薄い雲肌麻紙もあります)
きょうのまとめ

やはり100号クラスとなると、和紙だけでも2万、3万はしますから、パネル台や絵具、仮縁代なども合わせると・・・破産しちゃいそう。現実にはできるだけ安い和紙を自分で裂いて貼り合わせるか50号の2枚組しかなさそうですね。やっぱりこういう和紙の世界も・・・アレですか。先生これ使ってください、とか巨大先生ならそういうことがあるのかなぁ。先生の一声でみんな同じ和紙を買いますものね。別の日展先生の教室では使ってる和紙が全然違ってちょっと高そうだったりするし。そうそう、私は和紙のゴミが欲しいな!書道や水墨画で失敗したりいらなくなったような和紙。誰か大量にプレゼントしてくれないかしら。