20160607

第三十五回 日本画無料講座 岩絵具が画面に落ちた場合の修正法

日本画の描き方講座35 日本画絵具が画面に落ちた場合の対処法

今回の日本画講座では、描画途中の画面(キャンバス)に日本画絵具(岩絵具)が落下した時の対処法です。この失敗は、日本画制作のキャンバスサイズが大きくなるほど起きやすくなるといえましょう。私の経験では「今日は気持ちが乗らないな~」という日に、つまり脳に疲労が蓄積されている時にこのようなミスは起きやすいと思います。

日本画絵具(岩絵具)が画面(和紙)の上に落下してしまいました
日本画絵具(岩絵具)が画面(和紙)の上に落下してしまいました。

まさに先日のことです。ちょっとやる気が湧かないな、という日に無理して日本画の岩絵具での着色をすすめていた時のことでした。絵皿を切らしており、仕方なく絵皿の蓋を裏返してそこに岩絵具と膠水を入れながら使っていました。準備不足であることは確かなのえすが、私は絵皿に岩絵具を残しておいて毎回捨てないタイプですので、それで絵皿を使い果たしていざ描きたい時に絵皿がないという状況がよく置きます。

つまり日本画を描くときに左脳から右脳に切り替えるまで時間がかかって構想も0になっていた時のことでした。いったん頭を切り替えると調子よく描けるのですが・・・。

そんな時にスボラな絵皿から日本画の和紙の上の花に薄桃色を塗っていたときのことです。気が付いたら葉の上にポタッっと桃色の岩絵具(人造岩絵具)を落としていました。私は画面に岩絵具を落としていることにもまったく気が付かずに描いていまして(つまり、夢中になっいて)、お絵かきを終えた時に絵具を落としていたことに初めて気が付き慌てました。

慌ててすぐに筆などで岩絵具を拭い取るべからず

この写真の岩絵具はこぼしてからどれだけ時間が経過しているのかわかりませんので、うっかり筆で拭い取ってしまうと下地まですべて取れてしまうことがよくあります。慌ててしまい、つい日本画絵具が乾くまで待てない時があるのです。ですので乾いた画面に絵具を零してすぐではない場合、いったん日本画絵具が乾くまで待ったほうがよいでしょう。逆に乾いている画面に日本画絵具をこぼしてしまった場合はすぐに拭えば大丈夫です。

失敗と試行錯誤を重ねて絵具除去の技術を取得する

私もプロではありませんので、お教えできることはこれくらいですが、水を付けた絵筆で岩絵具を少しずつ丁寧になぞりこぼした絵具を削り取ります。気を付けるべきことはお察しの通り、下の絵具を削らずに絵具を拭うことです。絵具の種類や量にもよりますが、あまり面相筆は使わないほうがよいのではないかと思います。そして中央を重点的になぞるのではなく全体をまんべんなく拭っていったほうがきれいに取れるのではないかと思います。

和紙に染み込んだ膠水の色までは拭えない

残念ながら、こぼした絵具と膠水の量が多ければ多いほど、輪っかのような茶色のシミが残ります。このシミまでは取り去ることはできません。もしも膠の着色を取りたいならば、熱めの湯を使い絵具ごと除去するしか通常の方法では取れません。

絵皿はなるべく描く場所の近くに置く

絵皿と描きたい場所との距離が長ければ長いほど、絵具に含ませた膠水の水分が多ければ多いほど日本画の画面の中に日本画絵具をこぼしてしまう確率は上がります。こればかりは透明のビニールを敷いてその上にタオルを敷いてそれから絵皿をキャンバス上に置くなどして大事な画面を保護するしか絵具の途中落下を防ぐ方法はありません。私は絵皿を日本画のキャンバスの上に置くことはほとんど絶対にしませんが、大作を描かれる場合はこういった絵具零しの対応をしておいたほうがよいといえるでしょう。とろみ(粘性)の強い状態の絵具はあまりこぼれることはありませんので、特に乾燥しやすい絵具の場合は手に絵皿を持って日本画を描くこともよくあります。

日本画の画面に付いたホコリはすぐに取るべき

今回のケースとは逆に、日本画を描いている最中に凄いホコリが画面に付着することがあります。暗い色の絵具を使用している時にはホコリは気になりませんが、写真の作例のように明るい絵具を使用している場合はホコリがかなり気になります。日本画の先生によっては遠くから鑑賞するので気にしなくてもよいという方もいらっしゃるようですが、私は先生ではありませんので、日本画の画面に付いたホコリは大嫌いです。ですので、私はホコリを取ろうとして乾いた画面を濡らして下塗りの絵具まで取り去ってしまうこともしばしば、その際は部分的に1から同じ色の塗り直しをしなければなりません。そんなことを思うと日本画の画面に付いたホコリは日本画絵具が乾く前に取ってしまうべきです。

日本画の作例から、岩絵具を削った後

最初の写真から、薄桃色の部分を短めの筆で削って20分ほど自然乾燥させてみました。岩絵具を削り取ってからどのようになったか写真を撮ってみました。まだ完全には乾いていませんのでむやみに触れてはいけません。

日本画で岩絵具を削った後の写真
日本画で岩絵具を削った後の写真

少々絵の具が残りましたが、点が残っているため後でもう少し削ってみようと思いますが、いったんこれで修正は完了としたいと思います。後でまたこれより暗い絵の具を塗りますので、絵具の除去はなんとかなったといえましょう。これが文化財の修復とかそういうことになると大失敗ですね(;^_^A