20170703

岩絵具の混色の方法 第五十五回 日本画無料講座

岩絵具の混色

通常日本画では絵の具の混色はあまり行われてきませんでした。それというのも岩石を砕いた絵の具は粒子が荒いので透明水彩や油彩絵の具のように混色できないからです。今回は比較的相性の良い日本画の絵の具を混色してみました。今回使用しました岩絵具は方解末12番と中川胡粉の岩若葉11番です。

日本画岩絵具の混色方法-方解末

まずは絵皿に適量の岩絵具を出し指で混ぜます。

日本画岩絵具の混色方法2

膠水を少量垂らしてよく練り好みの固さにして混色の完成です。

今回は11番の粒子と12番の粒子の組み合わせですが、岩絵具を混色する場合は同じ粒子番号の絵具を用います。異なる粒子番号や材質の岩絵具を混色すると比重などの違いによりどちらか一方が浮いてしまったり、あるいは沈殿して混色の効果が失われます。

また、写真で見てみると絵具が濡れているときには緑色がちょうどよい感じに見えますが、絵具が乾くと方解末の白さが強調されました。

日本画用の絵具は湿っている時と乾いている時とではまったく異なる色になる絵具がいくつもあります。

今回の場合、若葉の11番は方解末12番より粒子が荒いので、方解末の白さが上面に際立ち若葉は沈殿して目立たない感じになりました。透明水彩ではこのような現象は無く水で溶いた色がほぼそのまま白い紙の上に反映されます。

岩絵具の混色はできる物とできない物があります。粒子番号が荒くなると混色というよりも点で描いているような感じになります。近い色合い同士の組み合わせは比較的混色の相性が良いですが、赤と緑などの反発し合うような色の混色は難しく透明水彩のようにグレーを作ることはできません。日本画絵具は不透明ですから透明な混色というものはできません。素材によっては有毒となる組み合わせもあるかもしれません。

混色するとどんな色になるか少量ずついろいろ試して色を探してみましょう。

20170701

図書レビュー「図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復」東京芸術大学大学院文化財保存学日本画研究室編

図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復のレビュー

図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復

本日レビューします日本画の図書は「図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復」東京藝術大学大学院文化財保存学日本画研究室編 東京美術出版(2008年 第三版)です。この本は日本画の参考図書としては直接の教科書にはならないものの、日本の文化財の展覧会に行くときには知っておいたほうがよい知識が書かれている本です。尚、同著者の「図解 日本画用語事典」はこの本をさらに詳しく分解して個別に説明した本であり、今回紹介します「図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復」は教科書的な役割の本となっています。

本書の目次

本書の構成は五部となっています。第一部は日本画全般についての説明です。基底材といって紙や絹、木に絵を描く方法と絵具や膠や筆などの道具、技法についての説明があります。第二部は模写の世界、第三部は修復の世界、第四部は研究の世界、そして最後はメッセージとなっていて初学者でも日本画と日本の文化財の知識を深めることができるようになっています。

図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復目次

図解 日本画の伝統と継承 素材・模写・修復目次

本の内容のレビュー

この本は同著者の「日本画用語事典」よりは文字が一回り大きく3mm程度の大きさで若いうちなら目を凝らさなくても割と読めるようになっていますが、50代を過ぎると悲しいかな虫メガネや老眼鏡が必要な感じです。やはり注釈などは2mm程度と小さな文字で写真も小さく日本画をはじめられた多くの高齢者にとっては読みづらいです。価格は2,500円に消費税8%であり「日本画用語事典」よりは千円安いものの、内容はその分薄く情報量も少な目です。しかしこれから大学や博物館などの講習に行かれる方が予習としてお読みになるには十分の知識が書かれていますので、この本を読むだけでもお教授様や学芸員の先生方の言っている事の意味が理解できるはずだと思います。たまーに知識の風呂敷を広げて先生に擦り寄る(金持ち)オジサンが生徒でいますけどね(笑)いくら趣味とはいえ、先生の隣はこれから発芽する若い者に席を譲ってあげるべきだと思います。

この本は個別の絵具については詳しく説明されていません。おおざっぱに岩絵具、新岩絵具、水干絵具という説明と製造工程の写真が載っています。膠については2ページが割かれており、写真入りの製造工程も載っています。用具もたったの2ページですし、描き方の2ページだけの紹介です。技法をお求めの方には物足りない内容といえましょう。だいたい何でも2ページですね(笑)

修復に結構ボリュームが割かれています。

あくまで最低限の必須の知識であっても、日本画の知識に漏れがある人にとっては入門書的な役割の本になると思います。しかし買ってまで読む必要があるかというとそうとは言い切れません。

ご苦労されて執筆・編集されたのはわかるのですが、同じ値段なら各分野の「詳論」を1冊ずつ未知の知識や伝統技法を詳しく本にしてくれたほうが学習者だけでなく各美術館・博物館の学芸員にとっても、本質的には日本の文化財を保護するためにもよっぽど有難いといえましょう。

お近くの図書館にあれば借りて読む価値はあるでしょう。冒頭の年表はちょっとした歴史の勉強になります。
図解 日本画の伝統と継承―素材・模写・修復 内容は薄めですが、アマゾンでのご購入はこちらです。今なら中古で半額以下で買えます。

図解 日本画用語事典 やはり、こちらの本のほうがさらに文字が小さいけどまだマシですね。でも値段高すぎ!アマゾンでの購入はこちらからです。楽天ブックスにも図解日本画用語事典 [ 東京芸術大学 ]はあります。
今回の貧乏日曜日本画家のレビューの内容がよければ本を買って行ってくださいね。

20170630

図書レビュー「図解 日本画用語事典」東京芸術大学大学院文化財保存学日本画研究室編

図解 日本画用語事典のレビュー

独学で日本画をお学びの皆さんのために今日は東京美術出版の東京芸術大学大学院文化財保存学日本画研究室編集の「図解 日本画用語事典」(2009年第三版)をレビューしたいと思います。監修者のお名前には故平山郁夫先生や田淵俊夫先生などたいへんご高名の先生方が名を連ねておられます。結論から言いますと、日本画を長くお続けになられるなら一冊は手に持っておきたい必携ともいえるおすすめの本ですが、字がたいへん小さいので三十代後半からの人にはたいへん読みづらい本となっています。どれくらい字が小さいかというと、三十代の私ですら頭が痛くなるほど本文が小さい2mmくらいの大きさです。

日本画用語事典
日本画用語事典の表紙

ではさっそく中身の閲覧といきましょう。

日本画用語事典目次

日本画用語事典目次

この本の構成は主に三部とあとがきから成っています。日本画という漠然としたカテゴリと絵具や道具の説明と、模写修復と保存です。日本画を楽しく描くだけの人にはあまり必要性のない本かもしれませんが、描くだけでも知識がもっと欲しいという人にとっては文化財の修復の知識を知ることも必要ともいえるでしょう。

内容は専門的となっていてフレスコなど一見して日本画とは関係のない用語の説明まであります(が日本画への理解を深めるためには必要な知識です)。ひとつの用語につき大体1行から3行でまとめられており、紅花や裂など日本画には必要がなくても文化財を知るために必要な用語がずらりと並んでいるので日本の博物展を見に行く際にお連れ様に知ったかぶりを披露して呆れられるほどの知識が得られます。

冒頭でも述べましたように、この本はたいへん字が小さいです。ぱそこんでいえばこれくらいの大きさで読むようなものです。よく高齢のお偉方がこれでよいとゴーサインを出したものですね(苦笑)学校の教科書でもこの文字の何倍も大きいですよ・・・。辞書みたいに字の小ささを真似しなくてもよかったのに・・・。ちょっと見るだけで目がかすみますので熟読すると目が悪くなります。

一応は絵具の練り方や膠の溶かし方も小さく載ってますけど、既に日本画を描かれている人にとってこれらの方法は当たり前のことですね。金箔にポマードも明治時代あたりからの既知の方法ですが金箔講習に行っておられない方には制作のヒントになると思います。

これは間違いなく日本画でもたいへん勉強になる本です!

もっと文字が大きかったらなぁ。

価格は定価3,500円+消費税です。
ISBNは978-4808708191です。

図解 日本画用語事典 アマゾンで買われる方はこちらです。

図解日本画用語事典 [ 東京芸術大学 ] 楽天ブックスで買われる方はこちらです。

ちょーっと値段が高くて私のような1枚も作品を売ったことのない貧乏日曜画家には手を出しづらいですね。そんな時はお近くの図書館に同じ本が置いてあるかもしれません。

どうでしたか?今回のレビュー記事は(貧乏な)日本画の学習者の視点でわかりやすかったでしょうか。よかったら本を買って行ってくださいね。

20170319

日本画和紙の水張り法を実演 日本画無料講座 第五十三回

日本画和紙の水張りの方法(水彩紙の水張りも同じです)

日本画和紙の水張りの方法(水彩紙の水張りも)
日本画を描くためにはまず和紙を水張りします。和紙の水張りとは、和紙を水に浸すことで繊維を伸ばし、平坦な木の板に和紙を張ることで描画時の和紙のたわみを防ぎ描きやすくする方法です。水張りの方法は水彩画とまったく同じです。中学校あたりの美術の授業でも画用紙の水張りを習った人もいらっしゃるのではないでしょうか。

木製パネル(またはベニヤ板)を準備する

作品を描きたいサイズの木製パネルを用意します。木製パネルは画材屋さんで購入することができます。自作したほうがいいという人もいますがFサイズに切る技術やホゾを掘る技術、歪みをなくす技術などが必要です。薄塗りする場合や掛け軸で軸装する場合など、作品を板から外す場合はベニヤ板のほうがコストパフォーマンスが優れます。このベニヤ板はヤニが出ますので中にはジェッソなどの塗料を塗る人もいるそうですが表面を樹脂やカルシウムで固めると湿気が溜まりカビが生じやすくなるデメリットがありますので絵画専用のヤニ止めを使われることが無難です。

和紙をパネルより一回り大きく切り出す

和紙をFサイズまたはPサイズより1.5cm~2cmくらい大きく切り出します。定規と鉛筆を使って裏面に線を引きはさみよりもカッターナイフを使ったほうが美しく切れます。FかPかといいますのは既製品の安価な額縁が買いやすいからです。財力がある場合はお好きなサイズに紙をお切りなってオーダーメードの額縁や掛け軸を注文しましょう。

糊を用意する

デンプン糊を用意します
和紙を木製パネルに水張りするために、大きな刷毛とデンプン糊あるいは水張りテープときれいな水を用意しておきます。水張りテープとは、紙のテープの裏に乾燥した糊が最初から塗ってあり、水に塗れることで接着力が生まれる便利な画材です。

刷毛を用意する

水刷毛を用意します
大きめの刷毛を用意します。刷毛はナイロンよりも羊毛が望ましいです。水を塗るだけですので安価で短毛の刷毛で十分です。安いと毛が抜けやすいですが、高い刷毛でもそれは同じかもしれません。この5号刷毛でも見た目は短毛ですが水の含みは程々で水張りには十分な性能がありました。

水とビニール敷きを用意する

日本画用の水鉢に水を汲んできます。プラスチックの筆洗いでも構いません。水張をする時は床または机が塗れますのでビニールや新聞紙などを敷いておきましょう。

和紙の表裏を確かめる

和紙の表裏を確かめる
和紙には表と裏があります。この三号鳥の子和紙の場合、つるつるしている面が表面で、ざらざらしている面が裏面です。初心者の人は裏面こそが表面であると勘違いしそうですね。私も最初は表と裏を間違えました。水張りの基本は裏面が板に密着するように、裏面に水を塗ります。

和紙の裏面に刷毛で水を塗る

刷毛に水をたっぷり含ませる
まずは刷毛に水をたっぷり含ませます。どの程度水を含ませるかは各人の好みであるのでたっぷりがいいとか、少々筆をしごいて水分を落としたほうがいいとか、スカスカがいいなど定まった方法はありません。私はたっぷりと含ませるようにしていますがポタポタと水が落ちるようなほどではありません。

刷毛で和紙に水を塗ります
刷毛で和紙の裏面に水を塗ります。どこからどの方角に水を塗っていくかは各人の好みといえましょう。角から塗る人、真ん中から塗る人、ランダムに塗る人、紙の伸びを考えるとそれぞれでありどれが良いとは一概に言えません。刷毛で塗る必要性もあるかと言われてみると無いといえます。むしろ刷毛よりも風呂の水に一度に漬けて浮かべたほうが均等に繊維が伸びると思います。要は繊維に水を含ませて伸ばすということです。この時に絶対やってはいけないのがぬるい湯を使うことです。必ず冷たい水を使いましょう。

この段階で失敗する人がいます。それは私です。紙がうまく張れたと思って、さあ下塗りをはじめたら和紙が膨らんで盛り上がって板と和紙の間に空気の膨らみが出来てしまったのです。この時の残念さといったらやり直したいくらいであり、やり直しました(※初心者の方はここでやり直してもまた失敗するので張り直しの必要はありません)。ですので私は先生から教えられた通りではなく、自分なりに工夫して水張りをすることにしました。

淵に糊をつけ周囲だけ貼り合わせる

パネルの枠に糊を塗り和紙を貼る
木製パネルの枠にデンプン糊を塗ります。そして静かに和紙をパネルに降ろし、空気が入らないように張ります。あるいは水で湿らせた水張りテープを周辺に貼り付けます。このとき手でごしごしと和紙をさすってはいけません。手で和紙をこすると和紙が痛みますので絶対にこすってはいけません。バレンもあまりおすすめはできません。大事なポイントは十分に水で和紙の繊維を伸ばしておくことです。私も初心者の頃はよく手や腕で紙を伸ばしたりしていましたが表面の繊維がボロボロと毛玉のようにくるくる剥がれてきますので、本当に作品を大事にしたいなら手で触らないようにしましょう。日本画教室では少々張り方がヘタでも、下手なのは当たり前であるのでうるさくは言われないと思います。特別に水張りを習熟したいという強い動機がなければほどほどの出来栄えで納得しましょう。

和紙の四隅を折りたたむ
和紙と木製パネルの四隅を折りたたみます。畳み方に決まりはありません。その後、描画中に時々剥がれてくることもあります。ただし、後々パネルから作品を剥がすことがある場合は切って処理しないほうが良いでしょう。

糊は密封して冷暗所に保管する

デンプン糊を密封して乾燥を防ぎ冷暗所で保管する
デンプン糊を密封して乾燥を防ぎ冷暗所で保管します。「障子やふすま用の糊」は防腐剤入りのデンプン糊です。フエキ糊は子供用の糊で開封後は乾燥したり分解しやすいです。どちらも放っておくと塊状になりますので密封して水分が飛ばないようにして冷暗所で保管します。フエキ糊のカップは糊を補充すればまた使えますので大事にしてあげましょう。自分でお米などから糊を煮て自作することもできます。

日陰で乾かして完成

室内で乾かして和紙の水張の完成(日本画・水彩兼用)
紫外線の当たらない場所で板に水張りした和紙を乾かせば水張りの完成です。今回は日本画の和紙と木製パネルで詳しく説明してみましたが、この上に透明水彩を描いたって全然オッケーです。水彩紙の水張りと同じですのでこの方法は透明水彩を描く時にも使えます。

日本画の水張りにおすすめの和紙

最後に日本画の水張りにおすすめの和紙を紹介したいと思います。厚塗りをした日本画を木製パネルに張ったまま長期保管するタイプの人におすすめの和紙はズバリ「鳥の子4号」です。鳥の子4号は厚みがあり水を塗っても裏が透けません。4号鳥の子和紙はパルプでできています。パルプの特徴である劣化については10年保管した程度では破れません。4号鳥の子和紙に対し3号鳥の子和紙は少々ミツマタ(三椏)が混ざっており上級の和紙となり紙の裏、つまり板が少し透けます。最高級の雲肌麻紙も種類によっては裏面が透けますが、耐久性があると言われています。鳥の子和紙の相場ですが、地元の画材店で3号で2700円に消費税、4号で1600円に消費税でした。
大事な日本画ですが、費用面で高くつきますので貧乏な人は4号鳥の子で練習するのがよいと思います。初心者の方でもお金持ちの方ははじめから高級和紙を買っていただくとみんなが喜ぶ思います(笑)

20170317

和紙のフォクシング(カビ)除去にエタノール 日本画無料講座 第五十二回

日本画の和紙がカビた(フォクシング褐色斑点が発生した)のでエタノールで除去を試み実験しました

日本画和紙のフォクシングというカビ(褐色斑点)

日本画を描いていると、カビ(フォクシングまたは褐色斑点)という問題に直面します。和紙にオレンジ色のシミや褐色の斑点がいくつも生じるのはカビが原因です。本なども同じようにオレンジ色や茶色のようなシミが発生します。この紙(本や古文書や絵画に使われている紙)や木の板(文化財など木製の作品)に褐色のシミが出来る現象をフォクシング(foxing)と呼びます。

フォクシングは和紙(本や日本画や古文書など植物の繊維)が劣化変質する

私も日本画を描いているのでわかるのですが、フォクシングが発生する場所は湿気の高い場所に集中する傾向にあります。ホコリが溜まると湿気も籠りますのでフォクシングが生じやすくなります。建物の二階以上に置けば良いだろうという単純な考えは対策になりません。家庭用のプラズマクラスター除湿器もフォクシングの対策としては効果がありませんでした。私はシャープのプラズマクラスター除湿器を愛用していますが、除湿効果はあるものの、スイッチを切ればまた湿度はすぐ上がるためカビそのものを防ぐ効果はありませんでした。フォクシングはカビが紙を食べている現象が人の目に見える状態になっているので紙が劣化しています。フォクシングが生じるのは何も和紙や本だけではありません。木綿や麻など植物の繊維で出来ている物ならどんな物でも、着物や洋服にもフォクシングは生じます。

フォクシングはいつ発生するか?

紙にカビが発生する原因に季節はあまり関係ありません。確かに梅雨から秋にかけてカビが生じやすい湿度と気温というものがありますが、湿度が高ければ冬や春でもカビは生じます。和紙を入手したその年あるいは翌年にはフォクシングが生じますので和紙の買いだめなどなさらないようにしましょう。

家庭でできるフォクシング対策

和紙や本をカビさせないためには、狭い所に作品や大事な物を収納しない、ホコリの溜まる場所に置かない、通気性を良くするしか対策はありません。押入れや戸棚などカビが喜ぶ場所に大事な絵画や文書などを保管しないことが一番です。ひと昔前(江戸時代以前)の日本や朝鮮、中国の本棚は部屋の中央に棚が置かれて書物を大事にしていました。桐箱の中にも湿気は入ります(除湿剤を入れて置いたら湿気がしっかりと溜まってました)ので安全とはいえませんが、紫外線を遮る効果のほかには桐の成分がカビを抑制する効果はあるかもしれません(桐箱の外側はカビが生じます)。しかし現代では本や絵画といえば壁の隅に置かれて大事にしていると思い込んでも実際は粗末に扱っていることがほとんどです。また額縁に大事に入れているから安心ということはありません。和紙は湿気を吸収したり放出したりしますのでその際に胞子のフィルターになるものを挟むなどしてカビの付着を防ぐ対策が必要となってきます。フォクシングを防ぐためには紙と乾燥剤を合わせてビニールなどで密閉するしかありません。しかし乾燥し過ぎもまた紙を劣化する原因となり乾燥を好むカビもいますのでカビに対する根本的な解決法は酸素を遮断する以外にありません。

エタノールでカビを殺菌する

日本画和紙にフォクシング(カビ)の発生を確認・除去を試みた
日本画和紙にフォクシング(カビ)の発生を確認したので除去を試みました。この和紙は2年ほど前に購入したものでしばらく段ボール箱に立て掛けたまま保管していたため、段ボールの底面に近い箇所にフォクシング(カビ)が発生していました。筆者も病気がちで絵画を描く気力が無かったので紙のメンテナンスまで気を配っていませんでした。段ボール箱に和紙を入れておいたことがまずかったようです。

このままフォクシングのある和紙を作品に使えばカビが拡がることは間違いありません。誰も見向きもしない私の作品が後世に残るとは思ってもいませんので、せっかくの和紙を捨てるのはもったいないので、できる限りカビを除去ようと試みました。

殺菌用エタノール(アルコール)をフォクシング(カビ)の除去に使います
殺菌用エタノール(アルコール)をフォクシング(カビ)の除去に使います。今回使用したエタノール(アルコール)は「フマキラーキッチン用アルコール除菌」です。どこにでも売られている台所用除菌スプレーです。
通常は博物館や図書館などでこのような余計なエキスの入っていないエタノールを使用します。使用時はマスクとゴーグルと手袋を着用します。無水エタノールは30%の濃度であり今回のような複数のカビを除去したい場合に使用します。消毒用エタノールは濃度が80%あり紙が変形します。参考文献「カビが発生したら」http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/15/pdf/15ac3.pdf
カビ(フォクシング)にエタノール(アルコール)を吹きかけました
試しにカビの生えた和紙に家庭用のエタノールを直接噴霧してみました。和紙にエタノールを吹きかけた瞬間は和紙が透き通りました。今回は水張りしたばかりの和紙ですので本のように塗料の脱色や変色の心配がありません。塩素も水洗いすれば使えそうな気もしましたが紙の色が抜けると思いやめました。

エタノールの塗布は吹き付けるのではなくエタノールを染み込ませた絹か何かで拭うなどしてもっと丁寧にしたほうがよいかもしれません。筆者の場合は価値ある作品ではなくまだ描く前の和紙の状態でしたので適当に行いました。

和紙のカビ(フォクシング)除去結果
数時間後・・・フォクシング(カビ)のスポットはきれいに消えたかのように見えました。しかし根が残っているスポットが二か所残りましたのでもう一度エタノールを吹きかけておきました。カビキラーが風呂のカビに完全に効かないのと同じで、どうやらエタノールでも完全にはフォクシング(カビ)を除去することはできないようです。

フォクシング(カビ)除去にエタノール使用は絵画や古文書(本)を傷める危険があることがわかった!

フォクシング除去にエタノールは紙を傷め変質させる

私はフォクシング(カビ)のスポットを除去出来て喜んでいました。しかし私はエタノールが紙の繊維を変質させていることに気が付きました。塩素は明らかに紙を脱色するのに対し、エタノールもまた紙の繊維に浸透して繊維を変質させていました。

念のためもう一度和紙を水で濡らして確かめてみました。するとエタノールを吹き付けたところがきれいに表れました。もしかしたらフマキラーの家庭用エタノールの精油成分あるいはカテキンエキスでありエタノールのシミではないかもしれませんが、これではさすがに日本画を描くことはできません。カビ菌もまだ付着しているだろうし、やむなくこの和紙を破り捨てることになりました。

また実験する機会があれば、次回は家庭用の消毒用エタノールで同じようにエタノールによるシミが和紙に残るのか実験してみたいと思います。

サクションテーブルとは

日本画などの文化財の修復ではサクションテーブル(suction table)という特殊な台が用いられます。要するに網状のテーブルで裏側に水を透過させて汚れを洗浄し裏側から水を吸引します。そして膠で絵具を定着させます。穴の開いた和紙は漉填(すきばめ)という手法で水に溶かした和紙で埋められます。

20170225

日本画というこだわりを捨てる 日本画無料講座 第五十一回

日本画であることを捨てて自由に描く

日本画

そもそも昔の人は、日本画のことを日本画とは思っていなかったのではないかと思います。古代であれば日本の絵は権力を後世にまで威張って残そうとするためのものであり万民のためのものではありませんでした。中世でも絵というものは中国や朝鮮の仏教文化の影響を受けた貴族が書画をたしなみステイタスを誇示して見栄えを競うためのものであって、感覚的な美を追求して男性社会で交流しつつも男としての優劣を競うためのものや仏教の教えを説明するためのものでした。貴族に文学という暇つぶしのメディアが誕生すると、宮廷文化を描き屋根抜き描法など読者を意識した絵が誕生しました。時代が進むと今度は寺社の坊主や武士が権力を誇示するために描かれた緊張感と威厳ある肖像画を豪華な絵を絵師に描かせて記録を残しました。これらの時代に絵の具というものはたいへん貴重なものであり墨絵が基本でした。庶民が絵を描き始めたのは江戸時代あたりになり汲み取り式の便所が整い酷い疫病と戦乱の世が終わり人々の識字率がよくなってからのことです。江戸や京の町では裕福な庶民が絵を求め、あるいは絵を描きはじめました。その時も日本画という認識はなかったのではないかと思います。

今では日本画というと誰だか知らない偉い人が区別した一ジャンルということになり、日本人が描く絵という大きな枠からは随分と小さなカテゴリに過ぎません。

浮世絵みたいな春画を現在も描く人が存在するのかどうかはわかりませんが、写真やアニメや漫画が春画と同じ目的で作られているのは説明するまでもありません。

つまり「何とか画」というジャンルへのこだわりは、本来は無意味なものなのです。

日本画とは、単なる画材の違いでしかなく、割と風流な絵や仏教的な絵が多いというだけであり、日本画でさえも伝統という枠からは明治時代以降は一部を除いてとっくに離れています。本当に日本画こそが伝統絵画というなら漆喰に絵を描いて極彩色で権力者の肖像画や仏教の絵だけ描いていればいいじゃないですか。そうじゃないのは日本画でさえも変わり続けてきた。つまり、日本画でも権力者の求めに応じて描き方が変化し続けてきたのです。今は国民に権力が委ねられている時代です。民主主義の考え方ではひとりひとりが小さな権力者であるといいますので心のままに描く権利が私たちにはあるのです(当然作品に対する責任も個人にあるわけですが)。よくどう描いていいかわからないと質問をする人が多数おりますけれど、好きなように描けばよいのです。

確かに権力者からお金をもらって作品を作ったり修復するなら伝統技法・伝統の画材を使う必要があります。はっきりいって職人として絵を作るほうが答えが既に決まっているのでラクです。修復という行為は本質的には本物を少しずつ交換して作品をさらにダメにすることになるのですが、私は作品を少しずつばれないように偽物と交換する勇気はないものの、時代とともにオリジナルが失われ偽物に置き換わっていくことはやむを得ないことだと理解しています。

日本画にデッサン力は不要

学校の入試ではデッサン力は必要ですが、日本画を描く際にはデッサン力は不要です。絵を描くためにいちいちデッサン力を求めていたら画材屋さんが潰れてしまいますよ(笑)デッサン力がなければないなりの作品を作ればよいのです。写実力というものは必要な人だけ学べばよいのです。冒頭の絵を見てください。デッサン力というよりも観察力のほうが大事なのです。つまり物を見て大事な瞬間を記憶する能力のことです。こればかりは・・・あったほうがいいですね。動き回ってる動物をデッサンすることは不可能です。動物を描くにはデッサン力よりも特徴を記憶する能力のほうが必要になってきます。写真は脳に残りませんのでダメですよ(笑)日本画の場合、描きたいものを脳に定着させないと描く意味がないのです。写真を日本画で描いてインチキするくらいなら写真を伸ばしたりPhotoshopで背景いじればよっぽどうまく写真を模した作品が作れます。今の時代は絵画でも写真を丸写ししてインチキできる時代ですからね。写真を模した絵も本物を模した絵よりも評価されているのが現代ですからいかにこの世が偽物であふれかえっているか残念でなりません。

日本画で好きな作風で描いてみよう!

日本画といっても一言でどの時代のどんな作風の絵画のことを指すのか、人によってさまざまです。絢爛豪華な襖絵のような権力を誇示する日本画から、墨だけの禅や中国の古典の世界を表現した日本画や、仏教の日本画、近代以降の厚塗りのこってり塗りの日本画や、卓上の小物を描いただけのシンプルな日本画など、西洋技法を織り交ぜた日本画、デフォルメされた日本画までいろいろあります。たいていの作品はかなり簡略化されていて、描きたいスタイルによっては何も精密に写生しなくてもよいし原型にこだわる必要はないのです。要は日本画でさえも好きなように描けばそれでよし!手本の模倣に徹するもよし!筆の勢いに任せるもよし!先生の作風をゲットするもよし!枠を超えて自分を極めるもよし!人生は短いですからあれもこれもと作風をマスターすることはできませんが、日本画を楽しんでいきましょう。

※このコラムは冗談半分のデタラメなので信じないでくださいね。

20161224

残酷な美術公募展という幻想 日本画無料講座 第五十回

公募展が日本のアートをダメにしている!?

世の中でアートといえば賄賂を使い巨大公募展で何度か入選した芸術家と、著名になりメディアに露出した(自称も含まれる)アーティストと、オークションで高値が付いり歴史的に高名になった作品だけが芸術のメインストリームとなっていいます。

メディアへの露出を増やすことで芸術家を装うことは「さむら何とか」という詐欺師でも可能ですから絵画の世界ならお金の力で誰かに絵を描かせて詐欺師でも芸術家となることも簡単でしょう。現に贋作を作る職人も日本だけでなく中国でも多く働いています。

アートと呼ばれる作品を見ていると頭がおかしくなりそうなくらいに考え込まれて作られたもの、そもそも脳に病気や障害のある人によって作られたもの、何らかの魔法で特別に引き立てられた芸術家様が作られたものとに分類されているような気がします。平凡な作家は無理してクレージーな模倣をすることで評論家に認められ、どや顔で飯を食べている。

とてもまともな人にはできないようなアートや不正に引き立てられたようなアートが現代では高評価となっているように思います。

じゃあ割とまともな人(常識に縛られた愚者)は起死回生をするチャンスがないのでしょうか。

世の中は残酷なものでまじめに努力した人が報われない世界が日本画にもあるように思います。日本画家がまじめにやるのは賞をとって食べられるようになってから。

もともと現代アートというものはヘンテコでクレージーなものだから、審査員にすべての美術史を知っている人を迎えない限りは公募展で優劣を決めることはまったくの無意味です。

インチキで利権を得た関係者がアーティストに足の裏を舐めさせて甘い汁を吸っている話を聞いたことがあります。ある人は自分を引き立ててくれた恩人殿の靴を舐めたと冗談交じりに言っていました。もしかしたらもっと卑猥な出世の条件もあるかもしれません。

世の中の芸術とは所詮この程度のものであり、愛だの優しさだのが本当に求められる清い精神(という建前)に対しては公募展は残酷であり実際に日展では汚れた人たちが公募展を運営・審査しています(筆者も関係者にその後もまだやってると聞いたことがあります)。

公募展の評価を信じるな

公募展の本質は受賞者にとっても運営者にとっても金目の価値しかない本質的には芸術ではない利権イベントです。

経歴だけで芸術家を評価してはいけない

大きな展覧会に入選を繰り返したり入賞したことを理由に芸術家を評価してはいけません。本物の無名の芸術家がかわいそうです。テレビに繰り返し出ている芸術家は佐村河内のような詐欺師の可能性もあるのでメディアへの露出や学歴を芸術の評価の基準としてはいけないと思います。目立てばお金持ちからの覚えがよくなることも事実ですが・・・。

美術館に行ってしたり顔は愚の骨頂

読めもしない古文書の博物展ですら行列を作ってしたり顔で鑑賞している私たちです。見てもわからない物を見て何を得たというのでしょう。すごい物を見に行ったという漠然とした事実と満足感のどこが作品を心から理解したといえましょうか。

ほとんどの観客は金銭的価値のあるお宝を見に行ったという程度の感想しかないでしょう。もはや芸術を鑑賞する時ですら自分の正直な気持ちが消えてしまっている時もあります。

ゴミに見えたわけのわからない物やただの模様と思えた作品に偽りの気持ちを隠してはいないでしょうか?そんな有名な作品を無条件で崇めていること自体が作品への冒涜であるように思います。無知による兼悪心や、好き嫌いがあって当然です。あるいは数年後にはそれほど好きではなくなることもあります。同じ作家だって得手不得手があり作品のクオリティーにも当たり外れがあります。

日本の芸術は死んでいる?

美術展覧会(公募展)という利権イベントはなくなればいいのにと思います。都道府県以下の公募展は競わせること自体があまりにも無意味であり、地方の公募展はむしろ家族や地域のコミュニケーションの場であるからそもそも優劣を競う必要はないでしょう。

芸術の振興とはそんのような形式的で小手先の無感情な施策で実現できるものではありません。みなさんもこれ以上つまらない公募展に金目か名声欲に負けて応募しないようにしましょう。芸術家が向き合うべき相手はそこ(賞という欲目金目のもの)ではない。芸術の分野でもスポーツの世界と同様に有力者が利権を独占し権威ある者への賄賂や何等かの物的・精神的・肉体的な欲望を満たさない限り邪魔者は疎外されています。この現実、つまり権力との強い結びつきこそが横山大観や黒田清輝などが目指した理想の世界の裏の顔でもあります。芸術家だから人格が高潔?むしろその逆ですよ。犯罪者でも歴史に残る芸術家になれる、これが真実です。偉そうに聖人面ができるのは特別な利権で守られた悪人だけです。

もしも賄賂で芸術家への道が開けるとしたら、あなたは悪魔に魂を売りますか?

※この文章はデタラメ創作なので信じないでくださいね。